JALに理解を深めよう
キャベツやタマネギは、いまではごくあたりまえの野菜となっているが、当時の日本ではいたって珍奇なるものだった。
人びとから敬遠され、それを売るのに辛酸をなめたという。
それでも当時、少しずつ登場してきた外国人相手のホテル、西洋料理店などから引きあいがあり、キャベツやタマネギは順調に需要を伸ばしていった。
ところが、トマトだけは売れない。
青くさく真っ赤なトマトは、人びとから気味悪がられ、つくってもつくっても畑で腐らせてしまう年が続いた。
I翁はそれでもトマトの栽培をあきらめず、なんとか売る手だてはないかと苦心した。
その結果、西洋料理にはトマトソースというものがあることを知る。
当時、名古屋で唯一の洋式ホテルだった名古屋ホテルから、外国製のビン詰めトマトソースを分けてもらい、それを手がかりに工夫をかさねて、ついに量産化に成功、現在のカゴメの基礎を築いた。
いってみれば、日本のトマト王とでもいうべき人物だ。
私はそのI翁にお会いしたことがある。
1968年、私が入社したときの会長訓示である。
入社式の壇上にあらわれた会長の年齢を聞いて驚いた。
なんと93歳だという。
かくしやくたるものであった。
驚くのはまだ早かった。
創業者のみならず、役員たちがそろって長命なのだ。
80代はあたりまえ、90代がソロソロといる。
これはえらい会社に入ったわいと、感心したというか、恐れ入ったというか。
享年は、創業者I翁の96歳を筆頭に、K氏の82歳、M氏の79歳、S氏の92歳、K氏の96歳、K氏の92歳、Sの92歳と、日本の平均寿命を大きく上回っている。
O氏は95歳で現在も存命しておられる。
58歳で亡くなったK氏をのぞくと、カゴメの役員の誰もが長命なのだ。
しかも女性より短命のはずの男性である。
これはいったいどういうことなのか。
トマトと関係があるとしか思えない。
役員には、K姓の人が多いが、これは別にK一族の同族経営というわけではない。
名前は同じでも、親戚というわけではないのだ。
もともとI翁のトマト栽培が、K姓の多い名古屋近郊の荒尾村ではじまったからだ。
K姓の人びとは、ルーツが海抜ゼロメートル地帯の輪中(堤防で囲まれた共同体)の村で有名なK村ということもあって、結束が固い。
その後、K姓の人びとが移り住んだ荒尾村の特産物としてトマト栽培が広がり、K村出身の人びとがごく自然に、トマトの加工、製造の仕事に参加していったということである。
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